間歇性跛行(かんけつせいはこう)について
2023/06/12
原因疾患
間歇性跛行の
原因は大きく分けて2つの可能性があります。1つは背骨の中の神経の束が圧迫されておこる「腰部脊柱管狭窄症」、もう一つは、脚の血管の血流が悪いと筋肉に血液と酸素が十分にいきわたらないことで起こる「閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)」によるものです。
両疾患は症状がよく似ていますが、原因が違いますので治療も異なります。医療機関で必ず鑑別診断を受けることが大切です。代表的な2つの疾患について次に説明します。
腰部脊柱管狭窄症(LCS:lumbar canal stenosis)
疾患
腰部脊柱管狭窄症は、背骨(脊柱)には“脊柱管”という脊髄や神経の束がとおる管が老化などによって狭くなり、背筋を伸ばして歩く動作を続けていると、徐々に神経の束を圧迫してしまい、下肢に痛みやしびれが出て、歩くことが困難になります。しかしベンチなどで(前かがみになって)腰掛けると症状も徐々に和らぎ、また歩くことができるようになります。このような間歇性跛行は特徴的な症状なのです。
予防と治療
骨盤が前傾が強くなると神経を圧迫してしまう
日常生活で姿勢を正しく保つ事が必要です。骨盤が前傾し腰椎が前弯(前に弯曲する)すると症状が出やすいので、腹筋と背筋は鍛えて強くします。特に腹筋は骨盤を後傾させますのでしっかり鍛えましょう。
症状が強かったり、筋力が弱い場合には、杖をついたり、シルバーカーを押して腰を少しかがめるようにして歩くようにするとよいでしょう。骨盤を後傾させて運動できる自転車こぎも痛みが起こりにくいので、よいエクササイズです。
整形外科的な治療としては、リハビリとして先ほど述べた筋トレの他に、筋肉の柔軟性を高めるストレッチ、患部への温熱療法を実施します。コルセットは悪い姿勢を防ぐことと、患部を安静にして炎症を軽減できます。痛みに対しては神経ブロックや脊髄の神経の血行を良くする薬などがあります。
しかし、歩行障害が進行し、日常生活に支障が出てくる場合には手術を行うこともあります。脊柱管を構成している椎弓(ついきゅう)を部分的にまたは広範囲に切除して、神経の圧迫を取り除きます。脊椎が不安定な場合には金属で固定することもあります。最近は内視鏡を使った低侵襲手術も行われるようになっています。
閉塞性動脈硬化症(ASO: arteriosclerosis obliterans)
疾患
手足の血管に起こる動脈硬化で、特に下肢の大血管が慢性に閉塞することによって、軽い場合には冷感、しびれ、歩行時の痛みを感じるようになります。重症の場合には下肢に潰瘍ができ壊死にまで至ることがある病気です。
症状
Fontaine分類(フォンテイン分類)
Fontaine 1度:(もっとも軽症):下肢の冷感やしびれ、色調の変化
Fontaine 2度:間歇性跛行があらわれ、数十から数百メートル歩くと、ふくらはぎの痛みなどの症状がでます
Fontaine 3度:安静時疼痛に至り、安静にしているときでも足や手が痛むようになります。
Fontaine 4度:(もっとも重症)下肢の壊死、皮膚潰瘍。糖尿病などによる感覚障害がない限り、激痛を有します。
※間歇性跛行が出てくるのは2度以上になります
簡便な検査
ankle brachial index (ABI) 足関節上腕血圧比
ABIとは閉鎖性動脈硬化症(ASO)において、下肢動脈狭窄や閉塞の程度を表す指標です。下肢と上肢の血圧の比であり、ABI = 足首の最高血圧 / 上腕の最高血圧 で計算します。
正常では下肢が下にあるので、やや下肢の方が血圧が高い(ABI > 1.2程度)。ASO患者では、しばしばこの比が1未満、場合によっては0.5未満にまで低下します。
ABI が0.9未満となる脚があれば、その脚の動脈が詰まり気味であることを表しています。
両疾患の違いの特徴
鑑別
間歇性跛行が気になりだしたら、必ず医療機関を受診しましょう。一般的に”腰部脊柱管狭窄症(LCS)”であれば「整形外科」、”閉塞性動脈硬化症(ASO)”であれば、「循環器内科」になります。自己判断はできませんが、以下の点をチェックすれば、ある程度予想はできそうです。
1.歩行でしびれが出てきたとき、腰掛けて症状が緩和されるのか、立ったままでもしばらく立ち止まっていれば症状が緩和されるのか?腰掛けると症状が緩和するならLCSの可能性が高い
2.腰痛があればLCSの可能性が高い
3.症状の出る脚がとても冷たいときは、ASOの可能性が高い
4.姿勢で症状が変わるならLCS、運動量で症状が変わるならASOの可能性が高い
5.両疾患の特徴をもつこともあります
医療機関に早めに受診して、日常生活に支障が出ないようにしていくことが大切です
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