体を動かす(しっかり使う)ことで運動機能を高めることが出来る
2022/03/31
スポーツ選手や芸術家など身体機能は健常人を超えた能力を発揮します。もちろん素質やトレーニング期間もありますが、相当な努力をして手に入れた特別な機能だと思います。
先日の「北京パラリンピック」でも多くの素晴らしいパフォーマンスが観られました。私も障がい者スポーツ指導員の資格をもって、車いすテニスやボッチャ、ブラインドテーブルテニスや車椅子バスケット、射撃など経験させていただきました。私は彼らが健常者以上の特別な能力を獲得されていることに驚き、感動したことを思い出します。
Neurorehabil Neural Repair(2021 Mar;35(3):220-232.)に掲載されている報告(Specific Brain Reorganization Underlying Superior Upper Limb Motor Function After Spinal Cord Injury: A Multimodal MRI Study:東京大学大学院のTomoya Nakanishi、Kimitaka Nakazawaら)を読んで、自分の考えていた考えに自信が持てたと同時に、リハビリを継続する意味や意欲につながると思いました。
その研究の内容は、交通事故などで脊髄を損傷し、完全に下肢が麻痺してしまった方を対象(スポーツ経験のある脊髄損傷者8人)に、彼らの上肢機能を健常者(10人)と比較したというものです。
握力を課題とするレベルに上手く合わせて出力するという力調節課題です。さらに実施中の脳活動を機能的MRI(fMRI)で測定しています。
その結果、脊髄損傷者の力調節能力は健常者より高く、課題実施時における脳の一次運動野の活動量は健常者より少ないことが分かった(少ないほど神経伝導の効率が良い)。
下肢が麻痺してしまったために、上肢で日常生活の大部分を行い、健常者では成し得ない能力を得たのかもしれない。また身体を使うこと課題を遂行することで中枢神経系にも変化をもたらすことができるという証拠のひとつだと思います。リハビリで質の高いメニューをしっかり行うことで、やはり身体機能は向上できるんだと確信しています。今回の文献は全ての人が共存できる社会へつながる報告でとても興味深い内容でした。
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